辞書制作に情熱を注ぐ小説『舟を編む』、気になりますよね?
三浦しをんさんの作品で、玄武書房の編集部が舞台です。
登場人物の馬締光也や西岡、荒木らが運命を左右する辞書づくりに挑む話しです。
そこに生まれる人間関係のドラマと、日本語の奥深さが心にしみるんです。
「アニメや映画と原作、違いはあるの?」と気になる方も多いでしょう。
アニメや映画、NHKでもドラマ化されているので、原作を読んでいない人でもストーリーを知っている人が多いはずです。
映像にはない言葉の重みを味わえ、読めば人生への思いが変わるかもしれませんよ。
※この記事では、あらすじや印象的は場面を簡単に紹介しますのでネタバレを含みます
三浦しをん『舟を編む』あらすじ・内容
三浦しをんの小説『舟を編む』は、辞書という地味に見える仕事に情熱を注ぐ人々の物語です。
2011年に光文社から出版され、2012年に本屋大賞を受賞し、2013年には映画化、その後2016年にアニメ化、2024年にドラマ化もされました。
辞書づくりは言葉を深く掘り下げ、人々の気持ちを結びつける力があります。
作品を読み進めるうちに、ありふれた単語が誰かの人生を変える存在だと気付かされます。
たとえば、大渡海と名付けられた辞書を完成させるため、玄武書房の面々が必死に手を動かす場面に胸を打たれます。
読んだあと、言葉の大切さを改めて感じたくなります。
物語の舞台となる玄武書房と辞書編集部の存在感
玄武書房の辞書編集部は、人の言葉を形にする場として大きな存在感を放ちます。
なぜなら、普通の営業や出版とは違い、言葉の本質を追い求める情熱が詰まっているからです。
そこに集う人々は、辞書の完成を目指して試行錯誤を続けます。
たとえば、大渡海の用例カードを集める作業では、それぞれの個性が発揮されます。
誰もが辞書づくりに誇りを抱きつつ、互いに支え合う様子が温かいです。
普段使う言葉が特別に思えてきます。
定年間近のベテランから若手まで揃う辞書制作への情熱
定年間近のベテランも若手も力を合わせる辞書編集部では、馬締の言葉への執着が大きな推進力になります。
ところが、西岡は自分がお払い箱かもしれないと気付き、複雑な気持ちを抱えます。
広告宣伝部への異動を告げられたあとも、馬締が苦手とする交渉を引き受ける姿に胸を打たれます。
辞書作りとは、人間関係まで浮き彫りにしてしまうものなのです。
みんなで大渡海を完成させるために集まった面々が、どんな思いで仕事に向き合うのか興味深いです。
私たちも会社での役割を見直したくなりますね。
辞書の世界を支える多彩な仲間たちと人生を変える信念が描かれる物語
辞書を編むという仕事は、単なる編集作業ではありません。
馬締光也や西岡、荒木ら多彩な人々が、大渡海を完成させるために力を尽くします。
会社の中で異動があっても、辞書づくりへの思いは揺るがないのです。
たとえば西岡は、お調子者と思われていますが、馬締が苦手な対外交渉を果敢にこなし、仲間を支えます。
言葉は人間の心をつなぎ、人生の運命を変える可能性があるからです。
だからこそ、彼らは家庭やプライベートを犠牲にしてでも言葉を追求し続けます。
読み進めるほど、辞書という書籍の奥深さを実感できる物語です。
トンチンカンだけれども辞書編纂(へんさん)の才能を開花させた男・馬締光也の魅力
トンチンカンに見える馬締光也は、実は言葉へ鋭い感覚を持つ人間です。
荒木公平が営業部から引き抜いたのも、大きな才能を見込んだからでしょう。
玄武書房で新たに作る辞書・大渡海の編集を任され、馬締は自身の不器用さに戸惑いながらも言葉の美を探求します。
自分の思いを伝えたい、みんなとつながりたいという強い気持ちがあるからこその行動だと伝わってきます。
たとえば下宿先では本を埋め尽くすほど読書に没頭し、語の意味を深く追い求めます。
その姿に心を打たれる人も多いはずです。
取り巻く面々とのやり取りにも優しい光が差し込み、馬締の魅力が一層輝きます。
出版社での営業経験ゼロから始まる奮闘と新たな人々との出会いが運命を変える
出版社に勤める馬締は営業経験ゼロでした。
初めは戸惑いが多く、同僚との意思疎通もままならなかったようです。
それでも辞書づくりに没頭するうちに、新たな人々と出会い、運命が変わっていきます。
なぜなら言葉へ真剣に向き合う姿勢は周囲の心を動かし、仕事だけでなく人間関係にも影響を及ぼすからです。
そうした過程を経て、彼は会社の中で自分の存在意義を見いだします。
読んでいると、誰にでも未知の可能性があると感じられます。
言葉と真摯に向き合う姿勢が生む、まじめすぎる馬締の日々に潜む葛藤
馬締は言葉を厳密に扱うあまり、まじめすぎる部分が目立ちます。
そのため社内でも浮いてしまい、自分に合っているのかと悩むのです。
どうして辞書の編集に携わっているのだろう?
本当に必要とされているのだろうか?
そんな葛藤を抱えても、馬締は語の意味を追究する手を止めません。
語彙に向き合う姿は孤独に見えますが、実は周囲を動かす大きな原動力になっています。
馬締の渇望する“伝わる言葉”を見いだしたとき、読んでいると胸を熱くします。
西岡や荒木ら同僚の並々ならぬサポートが辞書完成への大事な鍵となる
辞書完成に向けた道のりは、馬締ひとりの力ではありません。
西岡や荒木ら同僚が並々ならぬサポートをすることで、大渡海という辞書は形になっていきます。
西岡は広告宣伝部への異動を言い渡されても、馬締が苦手な対外交渉を代わりに担い、最後まで辞書を支え続けました。
彼らは用例採集カードを欠かさず、語釈や印刷用紙にもこだわるほど、辞書編纂に人生を懸ける面々だからです。
そうした思いが結集するとき、作品に込められた情熱がひときわ際立ちます。
言葉と向き合う中で生まれる人間模様と人々の心の変化が紡ぐドラマ性
言葉を丁寧に扱うからこそ、登場人物たちの人間模様がより深く描かれます。
辞書編纂の地味さとは裏腹に、一つの言葉にこだわることで心の変化が浮き彫りになるのです。
読んでいると、三浦しをんさんの筆致が優しく、あたたかい雰囲気を感じます。
物語は静かながらも人の心をほどいていく。そんなドラマを堪能できる作品です。
映像化された『舟を編む』と小説版との違い
『舟を編む』は小説が発売された2011年から2年後の2013年に映画化されました。
また、2016年にはアニメ化、2024年にはテレビドラマ化もされています。
映像化によって場面描写が視覚的に広がり、辞書編集の地道な作業も臨場感たっぷりに表現されます。

小説と映像作品の違いはどこにあるのか、気になる人も多いでしょう。
文字で読むからこそ感じられる言葉の重み、一語一語を丹念に考察する奥行きが、小説には息づいています。
映画やアニメ、ドラマは役者の演技や音楽が加わり、情景が一気に胸に飛び込んでくる魅力を持っています。
両方を比べると、辞書づくりの真摯さが少し違った形で伝わってくるので面白いです。
私のように映像作品から入ったほうが、小説を楽しめる人は多いはずです。
推理小説以外は、ストーリーをなんとなくわかっているほうがスラスラ読めるからです。
どちらを先に楽しむべきか迷う人も多いでしょうが、それぞれの良さを味わってみるのも良い選択です。
『舟を編む』のまとめ
『舟を編む』は読むほどに感想やレビューが増え、辞書という存在への興味も高まります。
三浦しをんさんの作品は比較的お手頃な価格で手に入るので、気になったら気軽に手に取ってみるのもいいでしょう。
どんな部分に魅力を感じるかは、人によって異なるかもしれません。
大渡海を編集する面々の熱意や、言葉という不思議な世界を深掘りする物語性など、話題が尽きないのです。
読んでいると知らず知らずのうちに、言葉に向き合いたくなるでしょう。
言葉は誰にとっても必要であり、深く探求すれば人生観まで揺れ動かすからです。
新たな言葉に触れたいと思ったとき、あなたもこの作品を手に取ってみませんか?
それでは
Have a good reading life!