現代社会では、仕事や家事、人間関係など、さまざまな場面でストレスを感じることがあります。
そんなとき、気分転換の方法として読書を取り入れている方もいるのではないでしょうか。
読書は、本の内容に意識を向けることで、日常の悩みやストレスから一時的に距離を置き、気持ちを切り替えるきっかけになる可能性があります。
ただし、「本を読めば必ずストレスが解消する」というわけではありません。
読む本の内容やその日の気分、読書が好きかどうかによっても感じ方は変わります。
また、ストレス解消を目的にするからといって、「毎日○分読む」「決めたページ数まで読む」と無理に決める必要もありません。
時間やページ数を達成することよりも、自分が楽しめる本を、負担にならない範囲で読むことを優先してみてください。
この記事でわかること
- 読書はストレス解消に役立つのか
- なぜ読書で気持ちを切り替えやすいと言われるのか
- 研究ではどこまで分かっているのか
- ストレス解消目的なら何分くらい読めばよいのか
- 無理なく読書を続けるコツ
- 読書そのものが負担になる場合
読書をストレス対策の一つとして取り入れたい方は、研究で分かっていることと、日常生活で無理なく取り入れる方法を分けて確認しながら、自分に合った読み方を考える参考にしてみてください。
なぜ読書でストレスが和らぐと言われるのか
読書がストレス対策の一つとして注目される理由には、本の内容に意識を向けることで、日常の悩みから一時的に距離を置きやすくなることが関係していると考えられています。
ここでは、読書が気持ちの切り替えにつながると考えられる理由を見ていきます。
日常の悩みから一時的に距離を置きやすい
仕事や家事、人間関係などでストレスを感じていると、その出来事について何度も考えてしまうことがあります。
そんなとき、本を開いて文章や物語に意識を向けることで、頭の中を占めていた悩みから一時的に離れるきっかけになります。
読書中に問題そのものがなくなるわけではありません。
それでも、ストレスの原因について考え続ける時間から少し離れ、別のことに意識を向ける時間を作れる点は、読書の特徴の一つです。
物語や文章に集中する時間を作れる
自分が興味を持てる本であれば、文章を追ったり、登場人物の行動を想像したりするうちに、本の内容へ自然と意識が向くことがあります。
小説なら物語の世界に入り込み、エッセイやノンフィクションなら、自分とは違う考え方や体験に触れることもできます。
こうした時間が、日常とは違うことへ意識を切り替えるきっかけになる場合があります。
一方で、内容が難しすぎたり、興味を持てなかったりする本を無理に読めば、かえって負担になることもあります。
ストレス解消を目的にするなら、集中することそのものを目標にするのではなく、自然に続きを読みたくなる本を選ぶことが大切です。
楽しめる読書であることも大切
ストレス対策として読書を始めるからといって、
「毎日必ず読まなければいけない」
「難しい本を読んだ方が効果がありそう」
と考える必要はありません。
読書が新しいノルマになってしまえば、それ自体が負担になってしまいます。
小説やエッセイ、ライトノベルなど、自分が興味を持てるものから選び、自分のペースで楽しみましょう。
読書がストレス対策として注目されている一方で、「6分読むとストレスが68%減る」といった数字を目にすることもあります。
次は、読書とストレスについて、研究ではどこまで分かっているのかを確認していきます。
読書とストレスに関する研究では何が分かっている?
読書とストレスの関係については、これまでいくつかの研究が行われています。
ただし、研究結果を確認すると、「本を読めば誰でも同じようにストレスが下がる」「○分読めば必ず効果が出る」とまでは言えません。
研究によって対象者や方法も異なるため、結果をそのまま日常生活のすべての人に当てはめないことが大切です。
読書とストレス・心理状態の関連を調べた研究はある
2020年に発表されたマギル大学の研究では、カナダの大学生231人を対象に、学年の始めと終わりに余暇の読書量や心理的苦痛などを調査しています。
その結果、余暇の読書は、学年を通した心理的苦痛の低下と関連していました。
また、自分から読みたいと思って読書をしている学生ほど、余暇に読む本の量が多いことも報告されています。
ただし、この研究は大学生を対象とした縦断研究です。
読書だけが心理的苦痛を低下させたと断定できる研究ではなく、すべての年代や生活環境の人に同じ結果が当てはまるとは限りません。
また、2025年に発表された「楽しみのための読書」とウェルビーイングに関するレビューでは、43報の研究が整理されています。
その中では、
- 日常のストレス要因から一時的に距離を置く
- 登場人物などを通して別の視点に触れる
- 読書を通して自分自身について考える
- 知的な刺激を得る
など、読書がウェルビーイングにつながると考えられる複数の仕組みが挙げられています。
(参考:Reading for wellbeing: a realist review of evidence)
一方で、このレビューも「読書をすれば必ずストレスが解消する」と証明したものではありません。
読書への感じ方や、読む環境などによっても結果が変わる可能性があります。
「6分でストレスが68%減る」はどう考えればいい?
読書とストレスについて調べていると、「6分の読書でストレスが68%減る」という数字を目にすることがあります。
この数字の出典として広く引用されているのが、2009年のDavid Lewisによる「Galaxy Stress Research」です。
Mindlab Internationalの調査として紹介され、6分程度の読書後にストレス指標が低下したという結果が、大学や研究機関などのWebサイトでも引用されています。
(参考:University of Minnesota:Reading for Stress Relief)
ただし、今回確認した範囲では、この調査について査読済み論文として研究方法や対象者、詳細なデータまで確認できる原著論文を確認できませんでした。
そのため、
「6分読めば誰でもストレスが68%減る」
「6分がストレス解消に必要な時間である」
と一般化するのは避けた方がよいでしょう。
また、以前よく紹介されていた、「読書は音楽や散歩よりもストレス解消効果が高い」といった比較についても、この調査結果だけを根拠に一般的な事実として断定することはできません。
研究から分かるのは、読書がストレスや心理状態と無関係ではなく、気持ちを切り替えたり、日常のストレスから一時的に距離を置いたりする方法の一つになる可能性があるということです。
一方で、「6分」「10分」「68%」といった数字そのものを目標にする必要はありません。
では、実際にストレス解消を目的として読む場合、どのくらいの時間を目安にすればよいのでしょうか。
ストレス解消目的なら何分読めばいい?
ストレス解消を目的に読書をする場合、「毎日○分読めばよい」という明確な正解はありません。
先ほど紹介した「6分」という数字も、すべての人に当てはまる基準として考えることはできません。
また、「10分以上必要」「20分以上読んだ方が効果が高い」と断定できる十分な根拠も、今回確認した範囲では見つかりませんでした。
大切なのは時間を達成することではなく、読書が新しい負担にならない範囲で楽しむことです。
まずは5分や1ページからでもいい
読書習慣がない人が、最初から「毎日30分読む」と決めても、続けることが負担になってしまう場合があります。
そのため、まずは、
- 5分だけ読む
- 1ページだけ読む
- 区切りのよいところまで読む
といった小さなところから始めてもよいでしょう。
ここでいう「5分」は、5分読めばストレスが軽減すると保証する時間ではありません。自分が負担を感じずに始められる時間の一例です。
読み始めて「もう少し読みたい」と思えばそのまま続けてもよく、疲れている日は数ページで本を閉じてもかまいません。
私自身も、まとまった読書時間を毎日確保していたわけではありません。
Kindleで購入した『狼と香辛料』1〜17巻収録の合本版は、子どもが寝た後から自分が寝るまでの5〜10分ほどを使って少しずつ読み進め、約4年半かけて最後まで読み切りました。
私の場合は、「短時間でも必ず読めば続く」というより、続きが読みたいと思える作品だったからこそ、短い時間を積み重ねて読み続けられたと感じています。

『狼と香辛料』を読了後にAmazonへ投稿したレビュー。約4年半かけて少しずつ読み続けた体験を書いています。
長く読むことより無理なく続ける
ストレス解消を目的にするなら、長時間読むことそのものを目標にする必要はありません。
長い本を一度に読み切ろうとせず、自分に合ったペースで少しずつ読み進める方法でも十分です。
たとえば、
- 昼休みに数分読む
- 家事が終わったあとに少し読む
- 寝る前の短い時間に読む
など、生活の中で取り入れやすい時間を使う方法があります。
毎日同じ時間に読めなくても問題ありません。
「読まなければ」と義務にするより、読みたいときに無理のない量を読むことを意識した方が、読書そのものを楽しみやすくなります。
ストレス解消目的で読書を続けるコツ
ストレス解消を目的に読書を続けるなら、読む時間だけでなく、本の選び方や読書する環境も大切です。
無理に難しい本を選んだり、毎日の読書を義務にしたりせず、自分が楽しめる本を自分のペースで読んでみましょう。
自分が読みたい本を選ぶ
ストレス解消のためだからといって、難しい本や勉強になる本を選ぶ必要はありません。
小説やエッセイ、ライトノベルなど、自分が「読んでみたい」「続きが気になる」と思える本を選んでみてください。
興味を持てない本を無理に読み続けるよりも、自分が楽しめる本の方が、日常の悩みから意識を切り替えやすいでしょう。
「小説・エッセイ・ライトノベルなど、どんなジャンルを選べばよいか分からない」という方は、ストレス解消につながる本のジャンルで、それぞれの特徴や選び方を紹介しています。
落ち着いて読める環境を作る
読書をするときは、できる範囲で落ち着いて読める環境を作ってみましょう。
静かな場所を選んだり、座りやすい椅子に座ったりするだけでも、読書に意識を向けやすくなります。
必ず特別な読書スペースを用意する必要はありません。自宅のソファやベッド、通勤中の電車など、自分が落ち着いて本を開ける場所で十分です。
周囲の音やスマートフォンの通知が気になる場合は、読書している間だけ通知を切るなど、自分が気になりにくい環境を作ってみるのもよいでしょう。
短い時間でも生活の中に取り入れる
読書を続けるために、まとまった時間を確保する必要はありません。
たとえば、
- 通勤時間
- 昼休み
- 家事が終わったあと
- 寝る前の数分
など、生活の中にある短い時間でも本を読むことができます。
「毎日必ず同じ時間に読む」と決める方法が合う人もいれば、時間が空いたときだけ読む方が続けやすい人もいます。
大切なのは、決めたスケジュールを守ることよりも、読書を無理なく生活の中に取り入れることです。
疲れたら無理に読み続けない
本を読み始めたからといって、必ず決めたところまで読まなければならないわけではありません。
文章が頭に入らなくなったり、目が疲れたりしたときは、一度本を閉じても大丈夫です。
別の日に続きを読んだり、今の自分には合わないと感じたら別の本に変えたりしてもかまいません。
ストレス解消のための読書が、
「今日も読まなければ」
「最後まで読み切らなければ」
という新しいストレスになってしまっては本末転倒です。
自分の体調や気分に合わせて、読む時間や量を調整してみてください。
一方で、本を開いても文章がまったく頭に入らない、読書すること自体がつらいと感じる場合もあります。
読書が逆にストレスになることもある
読書は気持ちを切り替える方法の一つになりますが、いつでも読書がリラックスにつながるとは限りません。
本を読むこと自体が負担になっているときに無理をすると、かえってストレスを感じてしまうことがあります。
たとえば、
- 難しい本を無理に読み続ける
- 決めたページ数を読まなければと焦る
- 内容が頭に入らないのに読み進める
- 疲れているのに読書時間を確保しようとする
- 買った本だから最後まで読まなければと考える
といった読み方です。
ストレス解消を目的にしているのであれば、読書量や読了冊数を増やすことが目的ではありません。
今日は数ページだけにする、別の本に変える、読まずに休むなど、その日の状態に合わせて調整してもよいでしょう。
また、「以前は普通に読めていたのに文章が頭に入らない」「本を開いても集中できない」といった状態では、単に本選びや読書時間だけの問題ではない場合もあります。
そのようなときは、無理に読書を続けようとせず、まずは休んだり、読む以外の方法で気分転換したりすることも選択肢の一つです。
読書はストレス対策のために必ず行わなければならないものではありません。
「読みたいときに、無理のない範囲で読む」くらいに考えておく方が、読書を楽しみやすくなります。
漫画でもストレス解消目的の読書になる?
ストレス解消を目的に読むのであれば、活字の本だけにこだわる必要はありません。
自分が楽しめて、気持ちを切り替えるきっかけになるのであれば、漫画を読むことも選択肢の一つです。
漫画は文章だけの本と比べて絵から状況を理解しやすいため、疲れていて長い文章を読む気になれないときでも手に取りやすい場合があります。
好きな作品の世界に入り込んだり、笑える漫画を読んだりすることで、日常の悩みから一時的に意識を切り替えられることもあるでしょう。
ただし、漫画を読めば必ずストレスが解消するというわけではなく、作品の内容やそのときの気分によって感じ方は変わります。
「疲れていて活字はつらいけれど、漫画なら読めそう」「ストレス解消目的ならどんな漫画を選べばよいか知りたい」という方は、ストレス解消と漫画の関係について紹介した記事も参考にしてみてください。
まとめ:読書を無理のないストレス対策の一つに
読書は、本の内容に意識を向けることで、日常の悩みやストレスから一時的に距離を置くきっかけになる可能性があります。
読書と心理状態の関係を調べた研究もありますが、「6分読めば誰でもストレスが68%減る」「毎日○分読めば必ず効果がある」と考えるのは適切ではありません。
ストレス解消を目的に読書を取り入れるなら、
- 自分が興味を持てる本を選ぶ
- 短い時間から無理なく始める
- 落ち着いて読める環境を作る
- 疲れたら無理に読み続けない
といったことを意識してみてください。
活字の本だけでなく、漫画など自分が楽しめるものを読むのも一つの方法です。
一方で、文章が頭に入らない、本を開くこと自体がつらいというときは、無理に読書を続ける必要はありません。
読書を新しいノルマにするのではなく、自分が読みたいときに、自分のペースで楽しむことを大切にしてみてください。
ストレスが溜まっていると感じたときは、気分転換の方法の一つとして本を手に取ってみるのもよいでしょう。
それでは、素晴らしい読書生活をお楽しみください。